ナローボディのハイエースをいろいろ工夫して、家族4人で車中泊やバンライフを楽しんでいます。
今回は、最近よく出回っているリチウムイオン系のポータブル電源と、従来のキャンピングカー等で主流のサブバッテリーについて、実際に取り出せる電力量の違いについて考えてみたいと思います。
「時間率」という考え方をおさらい
まずはバッテリーの基本性能について考えるにあたり、どうしても避けて通れない「時間率」という言葉についておさらいしておきましょう。
通常の場合、車のエンジン始動に使われるバッテリーは「5時間率」、一方サブバッテリーの方は「20時間率」で表されます。
この違いは何でしょうか?
たとえば100Ah、20時間率のサブバッテリーがあるとします。このサブバッテリーは20時間かけて100A取り出せる、という設定で作られています。
20時間で100Aなので1時間あたりは5A(5A×12V=60W)です。つまり、20時間率のサブバッテリーは、1時間に60Wずつ電力を消費し続けた場合、約20時間使えるということになります。
これは、最大60Wしか使えないという意味ではありません。表示通りの100Ahの電力量を取り出すには20時間かけてゆっくり電気を使う必要があるということです。
もし1200Wの電子レンジなど、急激に大きな電力を使った場合には、20分ほどで電圧が下がり機能が停止してしまうという実験結果があります。
このようにサブバッテリーの電気特性は、ある程度時間をかけて、じっくりと電気を取り出すのに向いていて、急激に大電力を使うと、表示されている電力量よりも手前で電圧が下がってしまって、それ以上エネルギーが取り出せなくなってしまうのです。
サブバッテリーは10000m走者みたいなかんじですかね。 10000m走者がスタートからいきなり100m走の走り方で走ると途中で息切れを起こして一気にスピードが落ちてしまうような感じですね。(例えが変ですが)
単純にサブバッテリーが100Ahと書かれてあるから100A(1200W)が1時間使える、と早とちりしてはダメなのです。
このように20時間率で表示されるサブバッテリーに対して、エンジンの始動に使われる車のバッテリーの方は5時間率で表されます。
5時間率ということは、5時間で元の表示電力が使えなくなるという意味です。1時間あたりに使える電力は20時間率のバッテリーより多いわけですが、車のバッテリーはサブバッテリーのように深放電できないので、放電してまた充電して、という繰り返しには向いていません。
5時間率の方が20時間率よりも厳しい条件なのですが、それだけエンジン始動に用いられるバッテリーは瞬間的に大きな電力が必要だからです。
セルモーターを回すにはとても大きな力が必要なので、それをまかなうバッテリーは5時間率という厳しい基準で設計されているわけです。
ただし、あくまでセルモーターという瞬間使用専用なので、家電製品などを持続的に使うことはあまり考えられていません。
セルモーターでドバッと電気を使ったあとは、オルタネータで走行充電され、満充電状態で次のセルモーター始動までは身体を休めているようなイメージです。
ここぞというときだけ登場してドカンとホームランを打つ指名打者みたいなイメージでしょうか?(またまた例えが変で申し訳ありません)
ポータブル電源の電気特性
一方、ポータブル電源によく用いられているリチウムイオンバッテリーですが、サブバッテリーとは電気特性が大きく異なります。
エンジン始動のバッテリーが一打逆転の指名打者、サブバッテリーが10000m走者とすると、リチウムイオンのポータブル電源は400m走のイメージでしょうか?
100m走ほどのスピード感はありませんが、人間が無酸素運動で走れる限界が400mと言われているように、400m走では自分のポテンシャルの全てを出し切ってゴールした瞬間に燃え尽きます。
iPhoneなどのスマートフォンにも同じくリチウムイオンバッテリーが使われていますが、その特徴は一定の電圧をキープして、ほぼ表示容量までそれを維持できることにあります。
100Ah.20時間率のサブバッテリーが1200Wの家電製品を連続20分間使用できたのに対し、同じ100Ahのリチウムイオンバッテリーでは1200Wを約53分間使用することができたという実験データがあります。その差は約2.5倍以上になりますね。取り出す電力が小さくても大きくても、電気特性は変わらずほぼスペック通りの電気が取り出せ、限界ギリギリまで性能があまり変化しない安定感がリチウムイオンバッテリーのメリットです。
さらにAC変換効率による目減りが。。。
このように、サブバッテリーとリチウムイオンバッテリーでは、大電力を取り出す場合には、比較的リチウムイオンバッテリーの方が電気特性上、長い時間使えることが分かりました。
さて、ここでさらにもう一つ「変換効率」の影響を考えておく必要があります。
変換効率というのは直流の電気を家電製品のACに変換する際に生じる熱損失のことをいいます。
サブバッテリーにせよリチウムイオンバッテリーにせよ、直流を交流に変換するとロスが生じます。
その値は取り出す電力量によっても変化しますが、大まかにいうと約2割は減ると考えておいた方がいいでしょう。
このような、バッテリーの表示上の数値と実際に取り出せる電力量の差を知った時は正直驚きました。
100Ah(1200Wh)クラスのサブバッテリー1台で、電子レンジが20分しか使えないということは、サブバッテリー1台あたりの容量は実質的に400Whほどということになります。
仮にサブバッテリーを3台設置したとして、取り出せる電力量はようやく1200Whですから、1つ 25kgからあるバッテリーを3台も設置することを考えると、電子レンジのような大電力をどうしても使いたいのであれば、1500Wクラスのポータブル電源を1つ買って運用する方がはるかに経済的だし便利だと思います。
逆に言えば、そこまでの大電力が必要なく、最大でも500W程度の電力が使えればいいのであれば、500〜700Whクラスのポータブル電源1台あれば十分な訳です。
ちなみに車載冷蔵庫の運用を考える場合、その消費電力は平均値で毎時20W(24時間で480W)程度ですから、日中にソーラー充電で満充電できるなら何とか500Whクラス1台で連続運用が可能です。
うちはスアオキG500を2台と100Wソーラー2枚でずっと運用してきましたが、3泊程度までの車中泊ならほぼ1台しか使わずにいけています。2台目は雨や曇天時の予備的な位置づけになります。(もちろん、2台目があることの心理的な安心感はとても大きく、ポータブル電源が1台しかなかったころは常に不安と隣り合わせでしたから、多少の余裕があるなら2台持ちがおすすめですが)
大は小を兼ねるか?
問題なのは、車中泊でどんな家電製品が使いたいか?です。
冷蔵庫、テレビ、扇風機、照明くらいまでなら500〜700Wクラスで十分です。
電子レンジや電気ケトルを使いたければ1500Wクラスが必要です。
ただし、大は小を兼ねるか?というと、答えはNOです。
例えば、1500Wクラスの大容量ポータブル電源1台で、電子レンジやケトルなどの大電力と、加えて冷蔵庫、テレビ、扇風機などの持続的な電力をまかなおうとした場合、大容量ポータブル電源に特有の「待機電力」の問題と、「AC使用時は必ずファンが回る」という問題があります。
電子レンジなどの大電力を1〜2分集中的に使うなら、使用が終わればACスイッチを切っておけば問題はないのですが、もしACコンセントに車載冷蔵庫を繋いで持続的に電気を使う場合、その大容量ポータブル電源は24時間ずっとファンが回りっぱなしになります。
その音は昼間ならまだしも、夜中じゅうファンが回りっぱなしではうるさくて眠れません。
現在出回っている大容量ポータブル電源を何種類か調べてみましたが、そのすべてがAC使用時はもれなく、「常にファンが回り続ける」ことが分かりました。
それだけAC使用時は熱損失により機器が熱くなるということなのでしょう。
今のところ、大容量ポータブル電源1台で大きな電力も持続的な小電力の機器も全てを賄おうとするには少し無理があるような気がします。
電子レンジやケトルを使うための大容量ポータブル電源を1台と、小電力機器のための500Wクラスポータブル電源を1台、この組み合わせで使うのが理想ではないかと思います。
予算的には大容量ポータブル電源が10〜12万円くらいと、500Wクラスが3〜5万円で実売されていますから、合わせて15万円くらいでしょうか?
サブバッテリーシステムで100Ahクラスを3台、それにインバーターや走行充電器や電圧計や接続ケーブルなどを合わせると同じくらいか、もっと高くなると思います。
いずれにしても電気ってお金がかかりますね。
でも、車中泊の快適化にはやはり電気が不可欠なのです。
どこまでコストをかけるか?はそれぞれの事情によるところですが、ある程度やりたいことがはっきりしているなら、多分どうせ最終的にはそこに行き着くので、チマチマちょっとずつやるよりは、思い切って最初に揃えてしまった方が結局は安上がり、かもしれません。
うちはそういう意味では数々の失敗を積み重ねてきましたので、その経験が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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