ナローボディのハイエースをいろいろ工夫して、家族4人で車中泊やバンライフを楽しんでいます。
今日は少し徒然なるままに書いてみたいと思います。
雨に想う
梅雨の長雨が続いています。
カラッと晴れた青空のもと爽快に車を走らせ、風光明媚な観光地を巡り、眺めのいい好きな場所に車を停泊して、星空を眺めながらビールを傾ける、そんな車中泊のイメージからはほど遠い、いつ明けるかさえ分からない梅雨の長雨の真っ只中です。
あまりに湿度が高すぎて、仕事場のコピー機はしょっちゅう紙詰まりを起こしています。
廊下も階段も電車の中も、どこも床が濡れていてツルツル滑って危ないです。
蒸し暑さと夜の寝苦しさで、誰かれなくみんな寝不足気味で、あちこちでイライラしたりギクシャクしています。
みんな、雨が嫌いみたいです。
それは確かにそうかもしれません。
雨さえこんなに降らなければ、熱海のあの激しい土石流だって起こらなかったでしょうし。
でも、雨に罪はないと思うのです。
子どものころの雨の思い出
もう何十年も前の、小学校のころの記憶です。
多分梅雨の時期だったと思います。
学校から帰ると、どんより垂れこめた曇り空の下、近くの駄菓子屋さんへ行って当時流行っていた「プロ野球スナック」というお菓子を買って、急いで家に帰るころにはパラパラと雨が降り出したのです。
雨が降ると外で遊べません。
あの頃は別に誰かと遊ぶ約束なんてしなくても、外に出れば誰かしら遊び仲間がいて、自然発生的に缶けりやコマ鬼や探偵ごっこやどう馬なんかをして遊びました。
でも、その日は誰とも遊ばずに家でプロ野球スナックを食べながら、畳の部屋でゴロゴロ過ごしていたのでした。
屋根をポツポツ叩く雨音や、半袖では少し肌寒かった事や、寝そべってスナック菓子を食べた時の畳のひんやりした感じとか。
何十年も前のことなのに、どうしてその雨の日の事を今でも覚えているのか不思議です。
何か特別なことが起こったわけでもなく、ただ雨の日の午後にスナック菓子を食べながら、窓の外から聞こえてくる雨音を聞いていただけなのに、その日食べたスナック菓子の味まで妙に鮮明に覚えているんです。
雨が降って、外で誰とも遊べなくて退屈なはずなのに、あまりそのことを嫌とは思っていなくて、逆にそんな雨の過ごし方がけっこう好きだったりするのです。
むしろ、雨が降って何もできないことが少し嬉しいようなくすぐったいような感じがしていた記憶があります。
狭くて壁の薄い家でしたから、雨音がザーッと屋根を叩くと部屋の中全体に雨音が反響し、重く垂れこめた雲のせいで部屋の中は薄暗く、まるで洞窟にいるような気分になります。
外に出られないという制約に自由を奪われた感じを抱きますが、自然現象のために奪われた自由は不思議と潔い諦めを伴っていて、何もできない不自由というより「何もしなくていい自由」を得たような、こころが解放される感じにむしろ近かったように思います。
そんな囚われの身の、洞窟の奥深くで食べたスナック菓子だったから、いつも以上に五感が研ぎ澄まされたのかもしれません。
雨の音、畳の肌触り、そしてスナック菓子の味。
ロビンソンクルーソーのような、あるいはジュールベルヌの海底二万里のような、孤独だけれど、むしろその孤独を楽しんでいるかのようなアンビバレンツな感じというんでしょうか?
人というのは勝手なもので、独りぼっちは寂しいくせに独りぼっちになりたがる厄介な生き物です。
「山を想えば人恋し、人を想えば山恋し」
信州大町市出身の登山家で北アルプス開拓の先駆者と言われている「百瀬慎太郎」の詩です。
実家にあった民芸品の飾りに、この詩が書かれていたのを子どもの頃よく目にしていました。この詩には「人間の本質」が表れているように思えます。
人はどこからやってきて、どこへ行くんだろう?
何をして生きても自由なはずなのに、学校に行ったり会社に行ったり、結局、義務に縛られて生きなければならない。
今がその状態にある人は山が(自由が)恋しくてなりません。
逆に、山を(自由を)手に入れた人は、しばらくするとまた人を恋しく思うのでしょうか?
あるいは、糸が切れた凧のように風に乗って、どこまでも自由に舞うことができるのでしょうか?
そこまでの自由を味わった経験のない自分には、その時何を感じるか見当がつきません。
あの小学生の時の雨の午後、もしかしたら私はつかの間の解放と自由な孤独を楽しんでいたのかもしれません。
今でもどちらかと言えば、大勢でいるよりも孤独でいることを好む方なので、自分の中のメーターの針は真ん中よりやや孤独よりを常に差している気がします。
義務やしがらみにがんじがらめに縛られれば縛られるほど、自由な孤独を欲する気持ちが強まっていき、そんな中この梅雨の長雨が私に、小学生の頃の記憶という形でメッセージをくれたのかもしれません。
いや、勝手な妄想ですが。
とりあえず、雨は人を哲学者にします。
そして、こんな長雨が、私はそれほど嫌いではありません。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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